DCECの大学生のラーナーさんに就職の相談を受けました。
「私はどの業界に行ったらいいんでしょう? どこの業界だったらこれからも安泰ですか?」
あなただったら、この質問にどのようなアドバイスをできますか?
私は正直、この動きの速い時代に「この業界に行ったら大丈夫」というアドバイスはできませんでした。
ただ、一つ言えたのは、
「世界中どこへ行っても働けるだけの実力をつけなければこれから生き残るのは大変」ということだけでした。
と言うのも、今までの常識が今後30~40年にわたって変わらないと言う事は想像もできない時代になってしまったから。
今までは憧れの的だったマスコミ業界のテレビや新聞、出版社など今大変な時代を迎えていることは先週書きました。
それに伴い、これまた憧れだった電通、博報堂などの広告代理店もこれからどうなるかわかりません。
トヨタ自動車だって今は世界一になりましたが、これから電気自動車の時代になり、インドのタタ自動車のような安い車が出てきたりと、いつ第二のGMにならないとも言えません。
では、Googleに入れば良いのか?
でもGoogleだって今は敵なしですが、これがいつまで続くか。
あのマイクロソフト帝国だって今や、Googleをはじめとするクラウドコンピューティングに脅かされ、もうマイクロソフトの時代は終わったと言われるぐらいです。
だから今具体的にどの業界がいいなどとはいえないのです。
では、なぜ「世界のどこへ行っても働ける」なのか?
◆日本のGDPは今後低下して行く
そこでまず見ていただきたいのが、国別GDP推移比較です。
http://www.delacruz-jp.com/mm/091024.html#graph1
IMFデータより作成
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2007/02/weodata/index.aspx
これを見ていただくと、世界第二位の経済大国というのが、もう過去の出来事になろうとしているのがわかります。
1985 1995 2005 2008
米国 4220.25 7397.65 12433.925 14305.702
日本 1356.717 5277.867 4557.105 4552.204
米国/日本 3.1倍 1.4倍 2.7倍 3.1倍
1985年には日本の3.1倍だったアメリカのGDPが95年には1.4倍までに縮まっています。アメリカの人口が倍以上いる事を考えると明らかにアメリカよりも稼ぐ様になっていたのがわかります。
ところが95年をピークにして、アメリカはどんどん増えているのに対し、日本は減少しています。
◆日本の人口は減少していく
今度は日本の人口の推移のグラフを見ていただきます。
http://www.delacruz-jp.com/mm/091024.html#graph2
総務省統計局『国勢調査報告』による。
これを見ると2005年をピークに急激に減少しているのがわかります。
これだけ人口が減れば当然GDPも減っていくのが自明の理です。
◆社会保障給付費はとんでもなく膨らんでいく
そしてここに社会保障給付費のグラフを重ね合わせるととんでもない事になっているのがわかります。
http://www.delacruz-jp.com/mm/091024.html#graph3
資料:国立社会保障・人口問題研究所「平成17年度社会保障給付費」、
2008年度(予算ベース)は厚生労働省推計
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/dl/21d.pdf
2005年の社会保障費のグラフと比べると2050年のグラフはとんでもなくそびえ立っているのがお分かりいただけると思います。
そしてこのグラフ私が勝手に作ったものではなく、厚生労働省が推計したデータに基づいて作ったものなのです。
このグラフを見てあなたは何を感じますか?
私はこのグラフを見て正直ショックを受けました。人口が減る中このように社会保障給付費が増えていったら、消費税を10%ぐらいにしただけでは決して問題解決にならないのがお分かりいただけるでしょう。
あなたが総理大臣だったらどのような対策を打ちますか?
現在は、日本人の間で給料は今後あまり増えそうもない、年金もそのうち破綻してもらえなくなる、こんな気分が蔓延しているため、日本人の財布の紐がますます硬くなりお金を使わなくなってきています。
それが更に景気を冷え込ませるという悪循環に陥っています。
だから、日本の景気を回復させるためには、今のこの重苦しい雰囲気を振り払うような、お金を使っても大丈夫なんだと国民が思うような未来を描かなければならないのです。
ではどうすればいいのか?
人口が減っていくのは厳然たる事実です。だからもちろん少子化対策は最重要で取り組まなければならない政策課題です。
しかし、子供が生まれてから働き出して、税金や社会保障費を負担する側に回るまでには20年以上の長い時間がかかります。
社会保障給付費が増えていくのも大きくは変えられない事実です。
だから2010年から出生率が急激に上がったとしても、2030年すぎまで労働者の一人当たり負担は大幅に増え続けます。
では、年金をカットしますか?
医療費をカットしますか?
自民党政権が多少手がけたのが医療費のカットでしょう。
その結果、もう既に産婦人科医、小児科医の不足、救急車のたらいまわしなど様々な負の影響が現れてきているのはご承知の通りです。
では介護費を減らすか?
こう考えても多少の無駄の削減ができたとしても、基本的に社会保障給付費を削減するのは困難であるのがわかるでしょう。
では、どんどん負担の増大する社会に甘んじるしかないのでしょうか?
唯一残された方法は、負担する人数を増やして一人当たり負担額を減らすということしかないでしょう。
それは何かといったら、外国人を大幅に受け入れる、これしかありません。
外国人を受け入れる、というと反射的に、そんなことをしたら治安が悪くなるから絶対反対という声が上がりますが、大切なのはどのような人材をどのように受け入れるのか、そしてどのように外国人を活用し、日本ですみやすくするのかを充分に検討して計画して受け入れること
でしょう。今のように野放図に単純労働者を受け入れて、景気が悪くなるとすぐにそのような外国人を解雇するというようなことをしていたら、当然治安が悪くなってしまいます。
もう時間はありません。
すぐにこのようなことを国民的議論として行なっていかなければ、私たち日本人の未来は、際限のない負担に苦しむだけの未来になってしまいます。
したがって、これからは外国に出て行くばかりではなく、日本国内でも外国人とコミュニケーションできる、交渉できる、そして外国人とともに働いていく力をつけることが重要なのはおわかりいただけたのではないでしょうか?