2/28/2010

浅田真央はキム・ヨナの素晴らしい戦略性に負けた!?



日本の期待を一身に背負った浅田真央が素晴らしい演技を披露してくれました。残念ながら金メダルは取れませんでしたが、その素晴らしい演技には世界中が酔いしれた事でしょう。ありがとう真央ちゃん。

そしてキム・ヨナも凄かったね。

この二人は良いライバルとして、これからの女子フィギュアスケート会のレベルアップに貢献していくことでしょう。


でも結果が出た後、何回もテレビで放送されるキム・ヨナ、浅田真央、そしてJoannie Rochetteの演技をくり返し見ているうちに少し、疑問が出てきました。

本当に真央ちゃんの演技は、キム・ヨナの演技と比べて大差をつけられるような演技だったのだろうか?
ロシェットと僅差しかない演技だったのだろうか?

真央ちゃんはキム・ヨナが出来ないトリプルアクセルを2回成功させ、それはかつて日本の伊藤みどりがオリンピックで飛んで以来誰も成功したことが無い歴史的な偉業と言えます。それに加えて芸術性では真央が上という声もあることを考えると、採点法が違い、また他の要素でもキム・ヨナのような戦略性があったとしたら、真央ちゃんが上だったかもしれないということに気がついたのです。

たしかにキム・ヨナはミスのない完璧なすべりをし、真央ちゃんは2回ほど小さなミスをしましたが、この二人のすべりは、他の選手達とレベルが違うスムーズさ、美しさを感じました。

ところが採点を見てみると、銅メダルのRochetteが芸術点で浅田真央を1.44上回っていて、フリーの合計得点でも0.44しか差が無いのです。真央ちゃんの演技とRochetteの演技がほとんど同じ??

これはやはり地元の有利さが出たといえるのではないでしょうか?

もちろんRochetteも素晴らしかったのでけなすつもりは毛頭ないのですが、ここに国際舞台で戦う時の注意点、どのような演技をすれば高得点が望めるのかをきちんと分析すること、そして地元を味方につけるということを充分に考えなければならないという点を見出したような気がしました。

どういうことなのか具体的に見て行きます。

新聞などで今回のフィギュアスケートの採点法の詳細を見ると難しいトリプルアクセルをやるより3回転連続の完成度上げて行うほうが高得点になるのがわかります。

男子も四回転を成功させたロシアのプルシェンコが金を逃し、四回転を回避したアメリカのライサチェクが金メダルでした。

この採点法が良いか悪いかは別として、実際そのような採点法が採用されているのであれば、その採点法で高得点を取れる事を考え構成を考えるのが賢い戦略と言えるでしょう。

そのような観点から考えるとキム・ヨナチームは演技の完成度を高めることで追加得点を取れる事を意識して、無理してトリプルアクセルのような難しい技に挑戦するよりも演じなれた同じわざを磨いてきました。

また観客を味方につけるという意味でもいくつもの工夫がみられます。
たとえばショートプログラムでは観客の良く知っている007のテーマ曲を採用してボンドガールを演じました。またフリーで選んだ曲は日本人はあまり知りませんが、北米では良く知られているアメリカの作曲家ガーシュイン作曲の「ピアノ協奏曲ヘ長調」を選曲して「観衆受け」をねらいました。

そしてもう一つ、カナダ人を味方につける長期的な戦略に気がつきました。彼女はカナダ人のコーチをつけ、カナダを拠点にして練習してきました。そうすると当然オリンピックの前からカナダのマスコミに取り上げられる機会が多くなったでしょう。日本で練習しているケニアのマラソン選手に日本人が親近感を抱くように、キム・ヨナはカナダ人からの親近感を勝ち取っていたことでしょう。

もし彼女がそんなことまで計算に入れ長期戦略まで考えていたとしたら、恐るべき戦略性といえます。

それに対して、浅田真央は素晴らしい演技をするということだけに真っ正直すぎたのかもしれません。

コーチはロシア人、選曲もロシアの音楽。キム・ヨナでさえ出来ない難しいトリプルアクセルを2回も入れることに拘った。ジャンプの合間の表現もとても奥深い様々な要素がこれでもかと盛り込まれていました。

見ていて本当に涙が出るほど素晴らしい演技だったと思います。

それでいて結果は大差をつけられての銀メダル。

やはり今回はキム・ヨナが圧倒的に強かったと誰にも思わせたのは、やはりその場にあわせた最高点数を取れる戦いをするという戦略、そして地元の観客を味方につけるという戦略の勝利だったといえるでしょう。

しかしそうだからといって、最高にプレッシャーのある中で自分の最高の演技をきめたキム・ヨナがすばらしい賞賛に値するものであることは間違いありませんが。


ただ一つここで日本人が教訓として覚えておかなければならないことがあるのではないでしょうか?

それは、国際社会で認められるためには、ただ高度なものを追求するだけではなく、その場に求められているものを達成する様に意識すること、そして他の国の人も味方に付ける事が重要だと言う事です。きっとこれはグローバルで活躍していこうと言うビジネスパースンや国と国との外交の世界にも当てはまる事でしょう。