12/22/2009

「天地人」と「坂の上の雲」の比較からわかる日本のお父さんの権威の変化

最近NHKの大河ドラマを見ていて気がついたことがあります。

なにかというと11月までやっていた「天地人」と今新しく始まった「坂の上の雲」では、お父さんの権威がちょっと変わっているのではないかということ。

すなわち天地人で描かれていた戦国時代は、父親の権威は絶対的なものであったのに対し、「坂の上の雲」で描かれている明治のお父さんはなんとなく頼りない。そして息子達は”飛んでいる”ように感じます。

実はこの違いに現在まで続く大きな課題が隠されているのに気がついたでしょうか。

つまり、戦国時代までは、それまでの価値が大きく転換する事がない世界なので、より長く生き、経験を積んできた父親の方が様々な事に通じ頼りになる存在だったのに対し、幕末から明治維新を迎えた後の「坂の上の雲」の時代は今までと全く違う価値観、世界に変わってしまいました。当然ながら、今までの知識や経験は時代遅れになるのに対して若い世代は、貪欲に海外のものを取り入れようとするので、新しい時代を支配する知識に関して老若が逆転してしまったのです。その結果、年配の父親世代は頼りなくなり、新しく世界を動かしている知識に通じた若い世代の方が頼りになるように感じるわけです。

その後、明治、大正、昭和の戦争までは明治維新で一新された価値観、知識は、それほど大きく変化することなくすすんだため、明治初期の若者達は、その後いろいろ知識を蓄え経験を積みその後の世代に対し威厳を保つ事ができたのでしょう。

ところがそれがまたひっくり返ったのが敗戦による価値観の大幅な転換です。ここでまた、今までの知識が陳腐化し、新しいものを貪欲に吸収した若者、すなわち松下幸之助や本田宗一郎、井深大・盛田昭夫達が活躍しました。

そしてその後の日本では、明治維新や敗戦のような価値観の大幅な転換は起こっていません。

では、現在お父さんの権威が高いかと言うと全くそんなことがないのが現実です。どうして?

ここでよく言われるのが「戦後の教育がわるかったからだ」ということ。

たしかに戦争に突き進んだ反省から道徳教育などが軽視されたきらいはあるかもしれませんが、果たしてそれだけでしょうか?

また、それ以外にもお父さんが勤めに出て会社で働いているので、何をしているのか、どのように働いているかを見る機会が無い子供に敬意が芽生えないということもあるかもしれません。

そしてそれとともに、逆から言えば父親も会社人間として仕事に邁進してきた結果、子供が何を考えているのか、何を悩んでいるのかを知らずに生活費を稼ぐという以外に子供を理解し支える、成長に貢献するとことができていないということも大きな要因として挙げられます。

そしてそれに加えて、今、社会の底流に流れているのが、「ますます加速する時代の変化」についていけないお父さんと新しいものをいち早く取り入れる若者の構造を挙げることが出来るのではないでしょうか。

これは、明治維新や敗戦のようにその時に一気に変わるというものではなく、日々急速な勢いで社会が変化をしていて、10年も経ったら気がつかないうちに世の中を支配する法則が大きく変わっていた、そんな世界に今私達は住んでいるのです。

それはどんなことかといえば、身の回りの小さなことでは、家電や携帯電話などの操作方法などが言えます。

それらは操作方法そのものが大きく変わるのではないけれども年々新しい機能が加わり、祖父母の世代はもちろん親の世代もその変化についていけず、子供達に聞かなければわからないというようなことが日々起こっています。

また大きくは、日々グローバル化が進展することで日本が高度成長期に世界の中で競争力をつけてきた様々なノウハウが役に立たなくなってきていることがあげられます。

戦後の日本は戦後の貧しい時代にも教育に力をいれ誰もが文字を読める国にしたのは非常にすばらしいことです。文字を読めることで様々なことを学ぶことが出来、また、新聞などで世の中のことを知ることができる。

しかし一方で日本の教育は、過去の知識を学ぶ、暗記を中心としたものでした。大学の入試なども覚えたものを正しく記入できれば正解をとれました。

過去に正しい手本や解があり、それを実行することで物事を解決できる時代はそれでもよかったのですが、今世界は超高速で変化を続けています。したがって、過去に例のない問題を自分で考えてどのように解決したらいいのかを導き出す力が必要とされています。

また、日本の中の経済が順調に成長し、日本で成功すれば会社も成長し個人も年々豊かになる時代には、海外のことはあまり気にしないでもよかったのが、現在、日本経済は縮小傾向に変わっています。
また、少子高齢化で高度成長期とは全く違った人口構造になってしまったため、日本の国の中の経済だけを考えていても豊かな未来を描くことが出来なくなってしまいました。

それもアメリカ一辺倒ではなく、BRICs諸国や巨大な人口国家になったEU、韓国やASEANなどとの関係も考えていかなければなりません。

その時に求められるスキルはなんでしょう?

戦後日本はみな文字を読めるようにすることで発展しました。
そう考えると、現在の世界で最新の情報をつかむために英語力を上げるのが必須であるのがわかるでしょう。

また、当然その情報を収集するためにはITスキルを上げなければならないのも疑いのないところです。

さらに言えば、これから世界の人たちと協力していく、一緒に働く、あるいは市場として開拓していくときに求められるスキルは言葉だけでなく、価値観や歴史、その他すべての要素が違う人ときちんとコミュニケーションが出来る力が求められるでしょう。

これらのスキルを身につけた上で、正解のない問題に取り組み、自分の頭で考えて解決していく力が必要でしょう。

ここでまたお父さんに戻ります。
日本のお父さんは、このような環境に対応していけるのでしょうか?

日本の経済を引っ張っているのはトヨタや日産といった自動車、パナソニックやソニーなど電機などもう50年以上日本を引っ張ってきている企業ばかりで、Googleなどの若い企業が次々生まれているアメリカとは大きく違います。

そのような大企業は当然年配のトップが会社を引っ張っています。
この年配のトップは、新しい情報を常に取り入れ、英語力とITを自分で使いこなす力、外国人とコミュニケーションする力をつけているのでしょうか?

正直かなり疑問に思います。

最近、いろいろな企業幹部と話す機会がありました。
メガバンクの役員、大手総合商社や自動車や航空宇宙メーカー、化学メーカーの部長など日本を引っ張る産業の幹部ばかりですが、彼らと話していると元気がありません。

もう新しいものを覚えられなくなっているとか、そろそろ楽な子会社の幹部に転進し、ゆっくりしたいなどなど。
また、ある部長は
「毎日E-mailを使っているんだからたいしたもんだろ」と言っていましたが、そこから類推するに同じ年代の人たちはE-mailさえも使っていないと言うことでしょう。

私など小さな企業を運営していると、何しろ常に新しいものを取り入れ世界に遅れないようにと様々なスキルを日々上げなければならない意識が強いのですが、日本経済を引っ張る大企業の幹部は50歳くらいからもう半分隠居に向けた意識が働きだしているようなのです。

このような意識を持っていると、当然日々変化している世界についていけなくなります。するといかにビッグビジネスの幹部と言えども家庭生活において、「なんだお父さん、英語もわからないの? iPhoneの機能も知らないの?」などと子供からみて頼りないお父さんになってしまいます。



でもこんなことが起こるのも年とともに理解力が落ちるのではなく、どうせこの年だからわからないだろうという本人の意識が大きいのです。

ニッポンのお父さん。
お父さんの家庭内での権威を保つため、そして日本の競争力を上げるため、今からでも遅くありません。ぜひ英語力とITスキルを身に着けるように頑張りませんか?